発火点・引火点から品名を特定して指定数量の倍数を求める
発火点480℃・引火点4℃という数値から、特殊引火物ではなく第1石油類だと見抜けるかがカギ。品名の判定と指定数量の倍数計算をセットで解説します。
指定数量の倍数計算そのものは単純な割り算ですが、この手の問題はまず品名を正しく特定できるかで差がつきます。今回は発火点・引火点の数値から品名を見抜く力が問われる一問です。
例題
屋内貯蔵所において、引火性液体Xを4000L貯蔵している。Xは非水溶性で、1気圧において発火点が480℃、引火点が4℃である。Xの指定数量の倍数として、次のうち正しいものはどれか。
- 2.0
- 4.0
- 7.0
- 10.0
- 20.0
正解は (5) 20.0 です。
Step 1: Xの品名を特定する
与えられた性状は次のとおりです。
- 引火性液体(第4類)
- 非水溶性
- 発火点 480℃
- 引火点 4℃(21℃未満)
第4類の品名は、消防法別表第一の備考で以下のように定義されています。
| 品名 | 定義(消防法別表第一 備考) |
|---|---|
| 特殊引火物 | ジエチルエーテル、二硫化炭素その他1気圧において、発火点が100℃以下のもの、または引火点が−20℃以下で沸点が40℃以下のもの |
| 第1石油類 | アセトン、ガソリンその他1気圧において引火点が21℃未満のもの |
| アルコール類 | 1分子を構成する炭素の原子の数が1個から3個までの飽和1価アルコール(変性アルコールを含む)。ただし飽和1価アルコールの含有量が60%未満の水溶液を除く |
| 第2石油類 | 灯油、軽油その他1気圧において引火点が21℃以上70℃未満のもの |
| 第3石油類 | 重油、クレオソート油その他1気圧において引火点が70℃以上200℃未満のもの |
| 第4石油類 | ギヤー油、シリンダー油その他1気圧において引火点が200℃以上250℃未満のもの |
| 動植物油類 | 動物の脂肉等または植物の種子もしくは果肉から抽出したもので、1気圧において引火点が250℃未満のもの |
この表を見ると、7品名のうち第1〜第4石油類と動植物油類の5品名は「引火点」の範囲だけで機械的に決まることがわかります。特殊引火物も判定軸の一方は引火点(と沸点)であり、化学構造だけで決まるアルコール類を除けば、引火点こそが第4類の品名を分ける最も重要なパラメータです。
そのうえでXを判定します。まずアルコール類に該当しないかを確認します。アルコール類は引火点の数値ではなく化学構造(炭素数1〜3の飽和一価アルコール)で定義される品名で、いずれも水と任意の割合で溶け合う水溶性物質です。非水溶性であるXはこの時点でアルコール類には該当しません。
次に特殊引火物の条件(発火点100℃以下、または引火点−20℃以下かつ沸点40℃以下)を確認します。この2つの条件は同じ物質が両方満たすとは限りません。たとえば二硫化炭素は発火点90℃で前者に該当しますが、アセトアルデヒド(発火点175℃)や酸化プロピレン(発火点449℃)は発火点では該当せず、引火点−20℃以下かつ沸点40℃以下という後者で特殊引火物と判定されます。Xは発火点480℃、引火点4℃でどちらの条件も満たさないため、特殊引火物ではありません。
アルコール類と特殊引火物という「引火点以外の条件を持つ2つの特別枠」を除外できた時点で、残るのは引火点の範囲だけで決まる5品名です。Xの引火点は4℃で「21℃未満」の範囲にあたるため、あとは引火点の値だけで第1石油類と確定できます。
発火点(480℃)は一見関係なさそうな数字に見えますが、実はこの問題の最大のひっかけです。「特殊引火物かどうか」を判定するために意図的に入れられています。
Step 2: 指定数量を確認する
第4類は品名の数が多く、水溶性・非水溶性で指定数量が変わるものもあるため混同しやすい分野です。危険物の規制に関する政令 別表第三をもとに、品名・代表例・指定数量を一覧にしておきます。
| 品名 | 性質 | 代表例 | 指定数量 |
|---|---|---|---|
| 特殊引火物 | — | ジエチルエーテル、二硫化炭素など | 50L |
| 第1石油類 | 非水溶性液体 | ガソリン、ベンゼン、トルエンなど | 200L |
| 水溶性液体 | アセトン、ピリジンなど | 400L | |
| アルコール類 | — | メタノール、エタノールなど | 400L |
| 第2石油類 | 非水溶性液体 | 灯油、軽油、キシレンなど | 1,000L |
| 水溶性液体 | 氷酢酸、アクリル酸など | 2,000L | |
| 第3石油類 | 非水溶性液体 | 重油、クレオソート油など | 2,000L |
| 水溶性液体 | グリセリン、エチレングリコールなど | 4,000L | |
| 第4石油類 | — | ギヤー油、シリンダー油など | 6,000L |
| 動植物油類 | — | アマニ油、ヤシ油など | 10,000L |
数字を覚えるコツは、表の上から下にいくほど指定数量も大きくなる(=危険性が下がる)という対応関係を軸にすることです。さらに第1〜第3石油類は、水溶性の指定数量が非水溶性のちょうど2倍になっています(200L→400L、1000L→2000L、2000L→4000L)。片方さえ覚えれば、もう片方は2倍するだけで求められます。例外はアルコール類で、第1石油類の水溶性と同じ400Lになる点だけ個別に覚えておきましょう。
Xは非水溶性の第1石油類なので、指定数量は 200L です。
Step 3: 指定数量の倍数を計算する
よって正解は (5) 20.0 です。
この問題のねらい
この問題は、単なる割り算の前に2段階の判定を踏ませる構成になっています。
- 発火点・引火点の数値から特殊引火物かどうかを判定する
- 水溶性か非水溶性かで指定数量が変わることを踏まえて倍数を計算する
どちらか一方でも読み違えると、選択肢の中の別の数字(200Lで計算した場合の20.0、400Lで計算した場合の10.0など)に引っかかるように選択肢が作られています。
まとめ: 発火点は「特殊引火物かどうか」の判定材料、引火点は「品名の範囲」の判定材料と役割を分けて読み取り、そのうえで水溶性・非水溶性を確認してから割り算する、という順序を崩さないことが得点への近道です。