免状返納命令の対象を見分ける
消防法第13条の2第5項の条文に基づき、危険物取扱者免状の返納命令がどのような場合に発せられるかを整理します。
危険物取扱者免状には、都道府県知事が返納を命じることができる場合が定められています。今回は5つの記述から返納命令の対象となるものを選ぶ設問を題材に、その要件を整理します。
例題
危険物取扱者が免状返納命令の対象となるのは、次のうちどれか。
- 免状の交付を受けてから2年以上の間、危険物の取扱作業に従事しなかったとき。
- 免状を汚損または破損したとき。
- 危険物を取り扱う際に、政令で定める技術上の基準に違反したとき。
- 身体が不自由になり、危険物の取扱作業をすることが不可能になったとき。
- 乙種危険物取扱者が、危険物保安監督者に任命されることを拒んだとき。
正解は (3) です。
各選択肢の検討
| 選択肢 | 内容 | 判定 |
|---|---|---|
| (1) | 免状交付後2年以上、危険物取扱作業に従事しなかった | ✕ 法令違反ではない |
| (2) | 免状を汚損または破損した | ✕ 再交付の対象であり、違反ではない |
| (3) | 危険物取扱いの際に、政令で定める技術上の基準に違反した | ○ 該当する |
| (4) | 身体が不自由になり作業が不可能になった | ✕ 法令違反ではない |
| (5) | 乙種危険物取扱者が保安監督者への任命を拒んだ | ✕ 拒否する義務違反はない |
なぜ(3)が該当するか
免状の返納命令について、消防法第13条の2第5項はこう定めています。
危険物取扱者がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反しているときは、危険物取扱者免状を交付した都道府県知事は、当該危険物取扱者免状の返納を命ずることができる。
ポイントは「この法律(消防法)又はこの法律に基づく命令の規定に違反しているとき」という要件です。「この法律に基づく命令」には、危険物の規制に関する政令(技術上の基準を定める政令)も含まれます。
(3)の「危険物を取り扱う際に、政令で定める技術上の基準に違反した」は、まさにこの政令(命令)の規定への違反にあたるため、免状返納命令の対象となります。
他の選択肢が該当しない理由
- (1) 危険物取扱作業に従事しない期間があること自体は、消防法や政令のどの規定にも違反しません。なお、危険物取扱者は業務に従事する場合に保安講習を受ける義務がありますが(第13条の23)、これは「従事しなかったこと」への制裁ではなく、実際に従事する際の受講義務の話です。
- (2) 免状の汚損・破損は、書換え・再交付(第13条の2第7項、政令で規定)の手続き対象であり、違反行為ではありません。
- (4) 身体的な事情により作業ができなくなること自体は、法令違反にも欠格事由にも当たりません。
- (5) 危険物保安監督者への任命を拒否すること自体を禁じる規定はなく、法令違反にはあたりません。
まとめ
免状返納命令の唯一の要件は「消防法又はその命令(政令等)の規定への違反」です。単なる不作為(従事しない、任命を拒否する)や、免状の物理的な劣化、本人の身体的事情は、この違反要件に当たらないため返納命令の対象にはなりません。「違反」という言葉が入っているかどうかに注目すると、選択肢を素早く絞り込めます。
参考文献
- 消防法 | e-Gov法令検索(第13条の2第5項)