製造所等の設置許可権者を見分ける
消防法第11条第1項に基づき、製造所等の設置許可権者を決める基準を整理します。
今回は5つの記述から正しいものを選ぶ設問を題材に、製造所等の設置許可権者を決める基準を整理します。
例題
危険物の製造所等を設置するには、法令に基づく申請手続きを経て許可を受けなければならない。次のうち、その許可権者として正しいものはどれか(移送取扱所を設置する場合を除く)
- 人口10万人以上の市の区域については当該市長、そのほかの市町村の区域にあってはその区域を管轄する都道府県知事。
- 市の区域にあっては市長、町村の区域にあっては町村長。
- 消防本部および消防署を置く市町村の区域にあっては当該市町村長、そのほかの市町村の区域にあってはその区域を管轄する都道府県知事。
- 消防本部および消防署を置く市町村の区域にあっては消防長または消防署長、そのほかの市町村の区域にあっては市町村長。
- 消防本部および消防署を置く市町村の区域、置かない市町村長の区域を問わず、都道府県知事。
正解は (3) です。
根拠条文
製造所等の設置許可権者は、消防法第11条第1項に定められています(移送取扱所を除く一般の製造所等の場合)。
製造所、貯蔵所又は取扱所を設置しようとする者は、政令で定めるところにより、製造所、貯蔵所又は取扱所ごとに、次の各号に掲げる製造所、貯蔵所又は取扱所の区分に応じ、当該各号に定める者の許可を受けなければならない。
一 消防本部及び消防署を置く市町村(消防本部等所在市町村)の区域に設置される製造所、貯蔵所又は取扱所(移送取扱所を除く。) → 当該市町村長
二 消防本部等所在市町村以外の市町村の区域に設置される製造所、貯蔵所又は取扱所(移送取扱所を除く。) → 当該区域を管轄する都道府県知事
つまり、設置場所の市町村に消防本部及び消防署の両方が置かれているかどうかによって、許可権者が「市町村長」か「都道府県知事」かに分かれます。
| 設置場所 | 許可権者 |
|---|---|
| 消防本部等所在市町村の区域 | 市町村長 |
| それ以外の市町村の区域 | 都道府県知事 |
※ パイプラインで危険物を移送する「移送取扱所」は取扱いが異なり、その区域のみに設置される場合を除き、都道府県知事(2以上の都道府県にまたがる場合は総務大臣)の許可が必要です。
各選択肢の検討
| 選択肢 | 内容 | 判定 |
|---|---|---|
| (1) | 人口10万人以上の市は市長、その他は都道府県知事 | ✕ 誤り。基準は「人口」ではなく「消防本部及び消防署の設置の有無」 |
| (2) | 市の区域は市長、町村の区域は町村長 | ✕ 誤り。基準は「市か町村か」ではなく「消防本部等所在市町村かどうか」。消防本部・消防署のない市もあれば、ある町村もあり得る |
| (3) | 消防本部等所在市町村は当該市町村長、それ以外は都道府県知事 | ○ 正しい(消防法第11条第1項第1号・第2号) |
| (4) | 消防本部等所在市町村は消防長または消防署長、それ以外は市町村長 | ✕ 誤り。許可権者は「市町村長」であり、消防長・消防署長ではない |
| (5) | すべて都道府県知事 | ✕ 誤り。消防本部等所在市町村では市町村長が許可権者となる |
なぜ(3)が正しいか
設置許可の権限が「消防本部及び消防署を置く市町村かどうか」で分かれているのは、消防本部・消防署を持つ市町村であれば、その市町村自身が専門的な消防・予防行政の体制を備えており、許可事務を適切に行えると考えられるためです。一方、消防本部・消防署を持たない市町村では、そうした専門体制が不十分なことがあるため、より広域的な行政主体である都道府県知事が許可権者となります。
この基準は、市か町村か、あるいは人口の大小とは無関係です。人口の多い市であっても消防本部・消防署がなければ都道府県知事が許可権者になりますし、逆に人口の少ない町村でも消防本部・消防署があればその町村長が許可権者になります。
まとめ
製造所等の設置許可権者(移送取扱所を除く)は、「消防本部及び消防署を置く市町村の区域か、それ以外の区域か」という1点で決まります。前者は当該市町村長、後者はその区域を管轄する都道府県知事です。
参考文献
- 消防法 | e-Gov法令検索(第11条第1項)