移動タンク貯蔵所による危険物の移送の基準を整理する
消防法第16条の2・第16条の5、危険物の規制に関する政令第26条・第30条の2に基づき、移送時の乗車義務・免状携帯・停止時の提示義務・移送経路の届出義務を整理します。
移動タンク貯蔵所による危険物の移送には、乗車義務や免状携帯など複数の規制が定められていますが、そのすべてがあらゆる危険物に一律に課されるわけではありません。今回は5つの記述から誤っているものを選ぶ設問を題材に、移送に関する基準を整理します。
例題
移動タンク貯蔵所による危険物の貯蔵・取り扱い及び移送について、次のうち誤っているものはどれか
危険物の移送の際、乗車を義務付けられて乗車している危険物取扱者は、免状を携帯していなければならない
乗車を義務付けられて乗車している危険物取扱者は、走行中に消防吏員から停止を命じられ、免状の提示を求められたら、これを提示しなければならない
移動タンク貯蔵所には、完成検査済証、点検記録などを備え付けておかなければならない
危険物を移送する場合には、移送する危険物を取り扱うことができる危険物取扱者が必ず乗車しなければならない
危険物の移送に際しては、必ず移送経路、その他必要な事項を出発地の消防署に届け出なければならない
正解は (5) です。
移送に関する基準まとめ
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 乗車義務 | 移送する危険物を取り扱うことができる危険物取扱者を乗車させて行う | 消防法第16条の2第1項 |
| 免状の携帯 | 乗車している危険物取扱者は、危険物取扱者免状を携帯していなければならない | 消防法第16条の2第3項 |
| 停止・提示の要求 | 消防吏員又は警察官は、走行中の移動タンク貯蔵所を停止させ、免状の提示を求めることができる(応じない場合は罰則あり) | 消防法第16条の5第2項 |
| 備え付け書類 | 完成検査済証、点検記録その他総務省令で定める書類を備え付ける | 政令第26条第1項第9号 |
| 移送経路等の届出 | アルキルアルミニウム、アルキルリチウムその他総務省令で定める危険物に限り、移送の経路等を記載した書面を関係消防機関に送付する(一般の危険物には適用なし) | 政令第30条の2第5号 |
各選択肢の検討
| 選択肢 | 内容 | 判定 |
|---|---|---|
| (1) | 乗車を義務付けられて乗車している危険物取扱者は、免状を携帯していなければならない | ○ 正しい(消防法第16条の2第3項) |
| (2) | 乗車を義務付けられて乗車している危険物取扱者は、走行中に消防吏員から停止を命じられ、免状の提示を求められたら、これを提示しなければならない | ○ 正しい(消防法第16条の5第2項、応じない場合は罰則の対象) |
| (3) | 移動タンク貯蔵所には、完成検査済証、点検記録などを備え付けておかなければならない | ○ 正しい(政令第26条第1項第9号) |
| (4) | 危険物を移送する場合には、移送する危険物を取り扱うことができる危険物取扱者が必ず乗車しなければならない | ○ 正しい(消防法第16条の2第1項) |
| (5) | 危険物の移送に際しては、必ず移送経路、その他必要な事項を出発地の消防署に届け出なければならない | ✕ 誤り。移送経路等の届出が必要なのはアルキルアルミニウム等の一部の危険物に限られる |
なぜ(5)が誤りか
移送経路その他必要な事項を記載した書面の送付が義務付けられているのは、政令第30条の2第5号により、アルキルアルミニウム、アルキルリチウムその他総務省令で定める危険物を移送する場合に限られます。この場合も、届出先は「出発地の消防署」に限定されるのではなく「関係消防機関」(移送経路上の関係する消防機関)であり、あわせて書面の写しを携帯し、その内容に従うことが求められます。
一方、ガソリンや灯油など一般の第4類危険物を含む大多数の危険物の移送には、このような移送経路等の届出義務はありません。(5)は「必ず」届け出なければならないとしている点で、対象を一般化しすぎており誤りです。
まとめ
移動タンク貯蔵所による移送では、危険物取扱者の乗車・免状携帯・停止時の提示、書類の備え付けは、扱う危険物の種類を問わず共通して求められる基準です。これに対して、移送経路等を記載した書面を関係消防機関に送付する義務は、アルキルアルミニウム等の一部の危険物にのみ課される特別な基準である点を区別しておきましょう。
参考文献
- 消防法 | e-Gov法令検索(第16条の2、第16条の5)
- 危険物の規制に関する政令 | e-Gov法令検索(第26条第1項第9号、第30条の2)