危険物保安に関する3つの役職の資格要件を整理する
消防法第12条の7・第13条・第14条に基づき、危険物保安統括管理者・危険物保安監督者・危険物施設保安員それぞれの資格要件を整理します。
危険物の保安体制には、危険物保安統括管理者・危険物保安監督者・危険物施設保安員という3つの役職があり、それぞれ役割も資格要件も異なります。今回は5つの記述から誤っているものを選ぶ設問を題材に、3つの役職の資格要件を整理します。
例題
危険物保安統括管理者、危険物保安監督者及び危険物施設保安員について、次のうち誤っているものはどれか。
- 危険物保安監督者は、甲種もしくは乙種危険物取扱者で、製造所等で危険物の取扱いに関わる実務に6か月以上従事したものでなければらない。
- 危険物施設保安員は、製造所等の点検業務、及びその構造・設備に関わる保安のための業務を行う。
- 危険物保安統括管理者は、当該事務所の危険物の保安に関する業務の統括管理にあたる。
- 危険物保安統括管理者は、当該事務所においてその事業の実施を統括管理する者をもって充てなければならない。
- 危険物保安統括管理者および危険物施設保安員は、危険物取扱者免状を有する者でなければならない。
正解は (5) です。危険物保安統括管理者・危険物施設保安員のいずれも、危険物取扱者免状の保有は要件とされていません。
3つの制度の根拠条文
危険物保安監督者(消防法第13条第1項)
政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、甲種危険物取扱者又は乙種危険物取扱者で、6月以上危険物取扱いの実務経験を有するもののうちから危険物保安監督者を定め(…)なければならない。
危険物保安統括管理者(消防法第12条の7第1項、政令第30条の3)
同一事業所において政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所を所有し、管理し、又は占有する者で、政令で定める数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱うものは、政令で定めるところにより、危険物保安統括管理者を定め、当該事業所における危険物の保安に関する業務を統括管理させなければならない。(消防法第12条の7第1項)
危険物保安統括管理者は、当該事業所においてその事業の実施を統括管理する者をもつて充てなければならない。(政令第30条の3)
危険物施設保安員(消防法第14条)
政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、危険物施設保安員を定め、総務省令で定めるところにより、当該製造所、貯蔵所又は取扱所の構造及び設備に係る保安のための業務を行わせなければならない。
条文を見比べると、危険物取扱者免状の保有が明記されているのは危険物保安監督者だけです。危険物保安統括管理者は「事業所の事業全体を統括管理する者(事業所長クラス)」であればよく、危険物施設保安員にも免状保有の要件はありません。
各選択肢の検討
| 選択肢 | 内容 | 判定 |
|---|---|---|
| (1) | 危険物保安監督者は甲種・乙種危険物取扱者で6か月以上の実務経験が必要 | ○ 正しい(消防法第13条第1項) |
| (2) | 危険物施設保安員は製造所等の点検業務、構造・設備に関わる保安業務を行う | ○ 正しい(消防法第14条、規則第59条) |
| (3) | 危険物保安統括管理者は当該事業所の危険物保安業務の統括管理にあたる | ○ 正しい(消防法第12条の7第1項) |
| (4) | 危険物保安統括管理者は当該事業所の事業の実施を統括管理する者をもって充てる | ○ 正しい(政令第30条の3) |
| (5) | 危険物保安統括管理者および危険物施設保安員は、危険物取扱者免状を有する者でなければならない | ✕ 誤り。いずれも免状保有は要件とされていない |
なぜ(5)が誤りか
危険物保安統括管理者は、個々の製造所等における現場作業の技術的な監督者(危険物保安監督者)とは異なり、事業所全体の経営・運営を統括する立場の者(工場長・事業所長など)が想定されています。危険物取扱いの専門知識よりも、事業所全体を統括し、必要な人員・体制を差配できる立場にあることが重視されるため、危険物取扱者免状の保有は要件になっていません。
同様に、危険物施設保安員も、施設の点検・巡視や異常時の連絡といった実務を担う役割ですが、免状保有は法令上の要件とされていません。
免状の保有(甲種・乙種、6か月の実務経験)が明確に要件化されているのは、危険物保安監督者だけである点を押さえておくことが、この設問のポイントです。
3つの役職の比較
| 役職 | 役割 | 資格要件 |
|---|---|---|
| 危険物保安統括管理者 | 事業所全体の危険物保安業務を統括管理する | 当該事業所の事業の実施を統括管理する者(免状は不要) |
| 危険物保安監督者 | 製造所等の現場で危険物取扱作業の保安の監督を行う | 甲種又は乙種危険物取扱者で、6か月以上の実務経験 |
| 危険物施設保安員 | 製造所等の構造・設備に係る点検等の保安業務を行う | 特に定めなし(免状は不要) |
まとめ
危険物の保安体制に関わる3つの役職のうち、免状(甲種・乙種)と実務経験(6か月以上)が要件とされているのは危険物保安監督者だけです。危険物保安統括管理者は事業所全体を統括する立場の者、危険物施設保安員は施設の点検・保安業務を担う者として位置づけられており、いずれも危険物取扱者免状の保有は求められていません。
参考文献
- 消防法 | e-Gov法令検索(第12条の7、第13条第1項、第14条)
- 危険物の規制に関する政令 | e-Gov法令検索(第30条の3)