危険物取扱者の保安講習を整理する
消防法第13条の23・危険物の規制に関する規則第58条の14に基づき、保安講習の受講義務と受講時期を整理します。
保安講習は、免状の交付元や危険物保安監督者への就任といった他の制度と混同されやすい分野です。今回は5つの記述から正しいものを選ぶ設問を題材に、保安講習の受講義務を整理します。
例題
危険物の取扱作業の保安に関する講習について、次のうち正しいものはどれか。
- 消防関係法令に違反した危険物取扱者は、1年以内にこの講習を受けなければならない。
- 免状の交付を受けた都道府県が行う講習でなければ受講することができない。
- 製造所等において危険物の取扱作業に従事している危険物取扱者は、講習を受けなくても免状返納命令の対象とはならない。
- 危険物取扱者が危険物保安監督者になるときには、この講習を受けなければならない。
- 製造所等において危険物の取扱作業に従事している危険物取扱者は、一定期間ごとにこの講習を受けなければならない。
正解は (5) です。
保安講習の根拠条文
保安講習は消防法第13条の23に定められています。
製造所、貯蔵所又は取扱所において危険物の取扱作業に従事する危険物取扱者は、総務省令で定めるところにより、都道府県知事(総務大臣が指定する市町村長その他の機関を含む。)が行なう危険物の取扱作業の保安に関する講習を受けなければならない。
具体的な受講時期は、危険物の規制に関する規則第58条の14が定めています。
製造所等において危険物の取扱作業に従事する危険物取扱者は、当該取扱作業に従事することとなつた日から1年以内に講習を受けなければならない。ただし、当該取扱作業に従事することとなつた日前2年以内に危険物取扱者免状の交付を受けている場合又は講習を受けている場合は、それぞれ当該免状の交付を受けた日又は当該講習を受けた日以後における最初の4月1日から3年以内に講習を受けることをもつて足りるものとする。(第1項)
前項の危険物取扱者は、同項の講習を受けた日以後における最初の4月1日から3年以内に講習を受けなければならない。(第2項)
つまり、実務に従事している危険物取扱者は、おおむね3年に1回のペースで講習を受け続ける義務があります。
各選択肢の検討
| 選択肢 | 内容 | 判定 |
|---|---|---|
| (1) | 消防関係法令に違反した危険物取扱者は、1年以内にこの講習を受けなければならない | ✕ 誤り。受講義務は「取扱作業への従事」が起点であり、法令違反を起点とする受講義務は存在しない |
| (2) | 免状の交付を受けた都道府県が行う講習でなければ受講することができない | ✕ 誤り。講習は免状を交付した都道府県に限らず、どの都道府県で受けてもよい |
| (3) | 製造所等において危険物の取扱作業に従事している危険物取扱者は、講習を受けなくても免状返納命令の対象とはならない | ✕ 誤り。受講義務(消防法の規定)に違反しているとして、免状返納命令の対象になり得る |
| (4) | 危険物取扱者が危険物保安監督者になるときには、この講習を受けなければならない | ✕ 誤り。保安監督者の選任要件は免状の種類と実務経験(6か月以上)であり、就任時に講習受講が要件とされているわけではない |
| (5) | 製造所等において危険物の取扱作業に従事している危険物取扱者は、一定期間ごとにこの講習を受けなければならない | ○ 正しい |
なぜ他の選択肢が誤りか
- (1):保安講習の受講義務は、あくまで「製造所等で危険物の取扱作業に従事していること」を起点として発生します。消防関係法令への違反は、講習の受講義務ではなく、免状の返納命令(消防法第13条の2)の対象になり得る別の制度です。
- (2):保安講習は都道府県知事(または総務大臣が指定する市町村長等)が行いますが、免状を交付した都道府県に限定する規定はありません。転勤や出張先など、免状交付元と異なる都道府県で受講することも可能です。
- (3):免状の返納命令は「この法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反しているとき」に発せられます。保安講習の受講義務も消防法上の規定であるため、これに違反する(受講しない)ことは返納命令の対象になり得ます。
- (4):危険物保安監督者に選任されるための要件は、危険物取扱者免状(甲種または取り扱う危険物に応じた乙種)を有していることと、6か月以上の実務経験を有していることです。保安講習の受講は、あくまで「現に取扱作業に従事している者」に課される別の義務であり、保安監督者への就任そのものの要件ではありません。
まとめ
保安講習は、免状の種類や交付元の都道府県にかかわらず、現に危険物の取扱作業に従事している者に対して、定期的(おおむね3年に1回)に課される義務です。受講しないこと自体が免状の返納命令の対象になり得る点、講習は交付元の都道府県に限られない点、保安監督者への就任要件とは別の制度である点を押さえておきましょう。
参考文献
- 消防法 | e-Gov法令検索(第13条の2、第13条の23)
- 危険物の規制に関する規則 | e-Gov法令検索(第58条の14)