エチルアルコールの性質を整理する
比重・蒸気比重・燃焼範囲・発火点・引火点など、エチルアルコールの性状に関する頻出ポイントを整理します。
エチルアルコールは数値を問う選択肢が多く並ぶ物質ですが、他の物質との比較で誤りを仕込まれることがあります。今回は5つの記述から誤っているものを選ぶ設問を題材に、性質を整理します。
例題
エチルアルコールについて、次のうち誤っているものはどれか。
- 比重は1より小さい。
- 蒸気は、空気より重い。
- 燃焼範囲は、おおむね3.3~19%(容量)である。
- 発火点は、300℃以上である。
- 引火点は、灯油とほとんど同じである。
正解は (5) です。
選択肢の判定
| 選択肢 | 内容 | 判定 |
|---|---|---|
| (1) | 比重は1より小さい | ○ 正しい(約0.80) |
| (2) | 蒸気は空気より重い | ○ 正しい(蒸気比重約1.6) |
| (3) | 燃焼範囲はおおむね3.3~19%(容量)である | ○ 正しい |
| (4) | 発火点は300℃以上である | ○ 正しい(約363℃) |
| (5) | 引火点は灯油とほとんど同じである | ✕ 大きく異なる |
なぜ(5)が誤りか
エチルアルコールの引火点は約13℃です。一方、灯油(第二石油類)の引火点は約40〜60℃で、両者には20〜50℃近い開きがあり、「ほとんど同じ」とは言えません。
アルコール類と灯油はそもそも品名が違う
そもそも、エチルアルコールが属する「アルコール類」と、灯油が属する「第二石油類」は別の品名であり、引火点の目安となる範囲も異なります。
| 品名 | 物質 | 引火点 |
|---|---|---|
| アルコール類 | メチルアルコール | 約11℃ |
| エチルアルコール | 約13℃ | |
| イソプロピルアルコール | 約12℃ | |
| n-プロピルアルコール | 約23℃ | |
| 第二石油類 | 灯油 | 約40〜60℃ |
| 軽油 | 45℃以上 | |
| クロロベンゼン | 約27℃ | |
| 酢酸 | 約39℃ |
アルコール類は、n-プロピルアルコール(約23℃)のような例外を除けば、代表的な物質の引火点はおおむね室温(20℃)以下に収まります。これに対し、第二石油類は「引火点21℃以上70℃未満」という品名の定義そのものが室温を超える範囲に設定されています。品名が違えば引火点の目安となる範囲も異なるため、「エチルアルコールの引火点は灯油とほとんど同じ」という(5)の記述は誤りだと判断できます。
他の選択肢が正しい理由
- (1) エチルアルコールの比重は約0.80で、水より軽い液体です。
- (2) 蒸気比重は分子量(46)から計算すると約1.6となり、空気(分子量約29)より重いことがわかります。
- (3) エチルアルコールの燃焼範囲(爆発限界)はおおむね3.3〜19%(容量)とされ、他の第4類危険物と比べても比較的広い範囲です。
- (4) 発火点は約363℃で、300℃を上回ります。引火点(約13℃)との差が非常に大きい点も特徴です。
代表的なアルコールの性状
品名としての「アルコール類」は炭素数1〜3の飽和一価アルコールを指します。代表的なものをまとめると次のとおりです。
| 物品 | 分子量 | 比重 | 蒸気比重 | 沸点 | 引火点 | 発火点 | 燃焼範囲 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| メチルアルコール(メタノール) | 32 | 約0.80 | 約1.1 | 約64℃ | 約11℃ | 約385℃ | 約6.0〜36% | 毒性が強く、失明や中毒死のおそれがある |
| エチルアルコール(エタノール) | 46 | 約0.80 | 約1.6 | 約78℃ | 約13℃ | 約363℃ | 約3.3〜19% | 酒類の主成分。毒性は比較的低い |
| イソプロピルアルコール(2-プロパノール) | 60 | 約0.79 | 約2.1 | 約82℃ | 約12℃ | 約399℃ | 約2.0〜12.7% | 消毒用アルコールとして使われる |
| n-プロピルアルコール(1-プロパノール) | 60 | 約0.80 | 約2.1 | 約97℃ | 約23℃ | 約371℃ | 約2.1〜13.5% | 引火点が20℃を超える例外的なアルコール |
まとめ
エチルアルコールは「比重1未満」「蒸気は空気より重い」「燃焼範囲が広い」「発火点が高い」といった性状を正しく押さえつつ、引火点(約13℃)は灯油(約40〜60℃)よりずっと低いという対比を理解しておくことが重要です。アルコール類の引火点はn-プロピルアルコールなどの例外を除けばおおむね室温以下であり、引火点21℃以上70℃未満と定義される第二石油類とは範囲が異なる、という品名レベルの理解があれば、この種の異なる品名同士を比較させる設問にも対応できます。