アルコール類の火災に普通の泡消火剤が使えない理由を整理する
水溶性液体であるアルコール類が、普通の泡消火剤の泡を壊してしまう仕組みと、耐アルコール泡が必要な理由を整理します。
アルコール類の火災に普通の泡消火剤が効かないのは、化学反応や燃焼熱の大きさではなく、水溶性という性質そのものが原因です。今回は5つの記述から正しいものを選ぶ設問を題材に、その仕組みを整理します。
例題
アルコール類の火災に消火剤として普通の泡が使用されない理由として、次のうち正しいものはどれか
- 泡消火剤と化学反応を起こし、泡を消すから
- 燃焼速度が速くなるから
- 比重が泡より小さいため、泡が沈むから
- 水に溶けやすいため、泡が破壊されるから
- 発生する燃焼熱量が大きいため、泡が破壊されるから
正解は (4) です。
なぜ普通の泡消火剤がアルコール類の火災に使えないのか
泡消火剤は、燃焼している液体の表面を泡の層で覆い、酸素の供給を断つ窒息効果によって消火します。この泡は水を主成分としており、油(非水溶性の炭化水素)の上に浮かんで安定した層を作ることができます。
しかし、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコールなど)は水と自由に混ざり合う水溶性の液体です。普通の泡をアルコール類の液面に放射すると、泡を構成している水分がアルコールに次々と吸収されてしまい、泡の膜(気泡構造)が壊れて消滅してしまいます。その結果、燃焼面を覆い続けることができず、窒息効果が得られません。
この問題を解決するために、アルコール類のような水溶性液体の火災には、泡が溶け崩れないように特殊な皮膜を形成する耐アルコール泡(水溶性液体用泡消火薬剤)が用いられます。
各選択肢の検討
| 選択肢 | 内容 | 判定 |
|---|---|---|
| (1) | 泡消火剤と化学反応を起こし、泡を消すから | ✕ 誤り。化学反応ではなく、水分がアルコールに吸収される物理的な現象 |
| (2) | 燃焼速度が速くなるから | ✕ 誤り。泡が使えない理由と燃焼速度は直接関係ない |
| (3) | 比重が泡より小さいため、泡が沈むから | ✕ 誤り。泡が沈むことが原因ではない |
| (4) | 水に溶けやすいため、泡が破壊されるから | ○ 正しい |
| (5) | 発生する燃焼熱量が大きいため、泡が破壊されるから | ✕ 誤り。熱量の大きさが直接の原因ではない |
まとめ
普通の泡消火剤がアルコール類の火災に効かないのは、化学反応や燃焼熱・比重の問題ではなく、アルコール類が水溶性であるために、泡の水分を吸収して泡自体を壊してしまうという物理的な現象が原因です。この性質のため、アルコール類のような水溶性液体の消火には、泡が壊れにくい耐アルコール泡が使用されます。