ジエチルエーテルの性質を整理する
麻酔性のある蒸気や過酸化物の生成、ガソリンとの比較など、ジエチルエーテルの性質に関する頻出ポイントを整理します。
ジエチルエーテルは特殊引火物の代表例として頻出ですが、比較対象(水か空気か、ガソリンより広いか狭いか)を入れ替えたひっかけが多い物質です。今回は5つの記述から正しいものを選ぶ設問を題材に、性質を整理します。
例題
ジエチルエーテルの性質について、次のうち正しいものはどれか。
- 蒸気は麻酔性があり、水よりやや重い。
- 無色透明の液体で無味無臭である。
- 直射日光に長時間さらしたり、空気と長く接触したりすると過酸化物を生じ、危険性が増大する。
- 引火点はガソリンより低く、燃焼範囲はガソリンよりやや狭い。
- 沸点が極めて低く、揮発性は小さい。
正解は (3) です。
選択肢の判定
| 選択肢 | 内容 | 判定 |
|---|---|---|
| (1) | 蒸気は麻酔性があり、水よりやや重い | ✕ 液体の比重は水より軽い(約0.71)。蒸気が重いのは空気に対して |
| (2) | 無色透明の液体で無味無臭である | ✕ 特有の(甘い)刺激臭があり、無臭ではない |
| (3) | 直射日光や空気との長時間接触で過酸化物を生じ、危険性が増大する | ○ 正しい |
| (4) | 引火点はガソリンより低く、燃焼範囲はガソリンよりやや狭い | ✕ 燃焼範囲はガソリンより広い |
| (5) | 沸点が極めて低く、揮発性は小さい | ✕ 沸点が低い物質は揮発性が大きい(矛盾した記述) |
なぜ(3)が正しいか
ジエチルエーテルは、直射日光にさらされたり空気と長時間接触したりすると、酸化されて過酸化物を生成します。この過酸化物は不安定で、蒸留などで濃縮されると、わずかな衝撃や加熱で爆発する危険性があります。そのため、遮光した容器で保管し、長期間の保存を避けることが安全対策として重要とされています。
他の選択肢が誤りである理由
- (1) ジエチルエーテルの蒸気には麻酔性があるという点は正しいですが、比較対象が誤っています。液体の比重は約0.71で水より軽く、蒸気の比重は約2.55で空気より重いという性質です。「水より重い」という記述はどちらの意味でも成立しません。
- (2) 無色透明の液体ですが、特有の刺激的な臭い(芳香)があり、無味無臭ではありません。
- (4) 引火点(約−45℃)がガソリン(約−40℃以下)より低いという前半は正しいですが、燃焼範囲(爆発範囲)は約1.9〜36%と非常に広く、ガソリン(約1.4〜7.6%)より広いため、「やや狭い」という記述が誤りです。
- (5) 沸点は約34.6℃と低いですが、沸点が低いほど揮発性は大きくなるのが一般則です。「沸点が極めて低く、揮発性は小さい」は矛盾した記述です。
ジエチルエーテルの主な性状一覧
選択肢に登場した内容以外にも、試験で問われうる性状をまとめると次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | 第4類 特殊引火物 |
| 色・臭い | 無色透明の液体、特有の刺激臭(甘い香り)がある |
| 液体の比重 | 約0.71(水より軽い) |
| 蒸気比重 | 約2.55(空気より重い) |
| 沸点 | 約34.6℃(非常に低く、揮発しやすい) |
| 引火点 | 約−45℃(第4類の中で最も低い部類) |
| 発火点 | 約160℃ |
| 燃焼範囲(爆発限界) | 約1.9〜36%(第4類の中で最も広い部類) |
| 水溶性 | 非水溶性液体に区分される(実際にはわずかに水に溶ける) |
| 電気の伝導性 | 電気の不良導体で、静電気が蓄積しやすい |
| その他の危険性 | 直射日光・空気との接触で過酸化物を生成する。蒸気に麻酔性がある |
沸点の低さ・引火点の低さ・燃焼範囲の広さはいずれも「特殊引火物の中でも特に危険性が高い」ことを示す数値であり、セットで覚えておくと他の特殊引火物(二硫化炭素、アセトアルデヒドなど)との比較問題にも対応しやすくなります。
まとめ
ジエチルエーテルは、特殊引火物の代表例として「引火点が極めて低い」「燃焼範囲が非常に広い」「過酸化物を生成しやすい」「蒸気に麻酔性があり空気より重い」という複数の特徴的な性状を持っています。比較対象(水か空気か、ガソリンより広いか狭いか)を入れ替えるひっかけが多いため、それぞれの数値と対象を正確にセットで覚えることが重要です。