性質・消火

アルコール類の性質を整理する

燃焼時の様子や毒性、分子量と蒸気比重の関係など、アルコール類に共通する性質と代表的な物品を整理します。

読了 6分 中級
  • #アルコール類
  • #性状

アルコール類は第4類の中でも独特な性質をいくつか持っています。今回は5つの記述から誤っているものを選ぶ設問を題材に、アルコール類の性質を整理します。

例題

アルコール類についての説明で、次のうち誤っているものはどれか。

  1. 引火すると黒煙をあげて燃焼する。
  2. 蒸気を発生しやすいが、引火点が常温(20℃)以上のものがある。
  3. メチルアルコールのように毒性の強いものもある。
  4. 分子量が大きくなるに従って、蒸気比重が大きくなる。
  5. 酒類の主成分は、エチルアルコールである。

正解は (1) です。

選択肢の判定

選択肢内容判定
(1)引火すると黒煙をあげて燃焼する✕ ほとんど煙を出さずに燃える
(2)蒸気を発生しやすいが、引火点が常温(20℃)以上のものがある○ 正しい(n-プロピルアルコールなど)
(3)メチルアルコールのように毒性の強いものもある○ 正しい
(4)分子量が大きくなるに従って、蒸気比重が大きくなる○ 正しい
(5)酒類の主成分は、エチルアルコールである○ 正しい

なぜ(1)が誤りか

アルコール類は炭素・水素・酸素からなる分子で、ガソリンなど炭化水素系の第4類危険物に比べて炭素の含有割合が低く、燃焼時にすすとなる未燃焼の炭素が生じにくいため、黒煙をほとんど出さずに燃焼します。さらに炎の色も薄く、明るい場所では目に見えにくいという特徴があります。

理科の実験で使うアルコールランプを思い浮かべるとイメージしやすいでしょう。エチルアルコール(またはメチルアルコール)を燃料とするアルコールランプの炎は、ろうそくのような黒っぽい炎ではなく、青みがかった薄い色でほとんど煙が出ません。これはアルコール類が炭素の少ない分子構造を持ち、完全燃焼しやすいためです。

この「燃えていることに気づきにくい」という性質はアルコール火災の危険性としてよく強調される点で、「黒煙をあげて燃える」というのはガソリンなど他の第4類危険物(石油類)の特徴であり、アルコール類の説明としては誤りです。

代表的なアルコールの性状

品名としての「アルコール類」は炭素数1〜3の飽和一価アルコールを指します。代表的なものをまとめると次のとおりです。

物品分子量比重蒸気比重沸点引火点特徴
メチルアルコール(メタノール)32約0.80約1.1約64℃約11℃毒性が強く、失明や中毒死のおそれがある
エチルアルコール(エタノール)46約0.80約1.6約78℃約13℃酒類の主成分。毒性は比較的低い
イソプロピルアルコール(2-プロパノール)60約0.79約2.1約82℃約12℃消毒用アルコールとして使われる
n-プロピルアルコール(1-プロパノール)60約0.80約2.1約97℃約23℃引火点が20℃を超える例外的なアルコール

比重はいずれも約0.79〜0.80で、水より軽いという点は4物品に共通しています。第4類危険物には比重1を超える例外(二硫化炭素や酢酸など)もありますが、アルコール類にはそうした例外はありません。

表のとおり、分子量が大きくなるほど蒸気比重も大きくなる傾向があります。蒸気比重はおおむね分子量に比例するため、メチルアルコール(32)→エチルアルコール(46)→プロピルアルコール(60)の順に蒸気比重も大きくなります。

他の選択肢が正しい理由

  • (2) アルコール類は揮発性が高く蒸気を発生しやすい一方、上の表のn-プロピルアルコール(引火点約23℃)のように、引火点が20℃を超えるものも含まれます。
  • (3) メチルアルコール(メタノール)は体内で有毒なギ酸・ホルムアルデヒドに代謝され、失明や中毒死を引き起こす強い毒性を持つことで知られています。
  • (4) 蒸気比重は分子量にほぼ比例するため、分子量が大きくなるに従って蒸気比重も大きくなります。
  • (5) ビールや日本酒、ウイスキーなど酒類に共通して含まれるアルコール成分はエチルアルコール(エタノール)です。

まとめ

アルコール類は「燃焼時に黒煙をほとんど出さず、炎も見えにくい」という点が、ガソリンなど他の第4類危険物と対比される重要な特徴です。この性質を知らないと、逆に「よく燃えるから黒煙も多いはず」と誤って判断しやすいため、注意が必要です。あわせて、分子量と蒸気比重の関係、引火点が20℃を超える例外(n-プロピルアルコール)も押さえておきましょう。