アルコール類の性質を整理する
燃焼時の様子や毒性、分子量と蒸気比重の関係など、アルコール類に共通する性質と代表的な物品を整理します。
アルコール類は第4類の中でも独特な性質をいくつか持っています。今回は5つの記述から誤っているものを選ぶ設問を題材に、アルコール類の性質を整理します。
例題
アルコール類についての説明で、次のうち誤っているものはどれか。
- 引火すると黒煙をあげて燃焼する。
- 蒸気を発生しやすいが、引火点が常温(20℃)以上のものがある。
- メチルアルコールのように毒性の強いものもある。
- 分子量が大きくなるに従って、蒸気比重が大きくなる。
- 酒類の主成分は、エチルアルコールである。
正解は (1) です。
選択肢の判定
| 選択肢 | 内容 | 判定 |
|---|---|---|
| (1) | 引火すると黒煙をあげて燃焼する | ✕ ほとんど煙を出さずに燃える |
| (2) | 蒸気を発生しやすいが、引火点が常温(20℃)以上のものがある | ○ 正しい(n-プロピルアルコールなど) |
| (3) | メチルアルコールのように毒性の強いものもある | ○ 正しい |
| (4) | 分子量が大きくなるに従って、蒸気比重が大きくなる | ○ 正しい |
| (5) | 酒類の主成分は、エチルアルコールである | ○ 正しい |
なぜ(1)が誤りか
アルコール類は炭素・水素・酸素からなる分子で、ガソリンなど炭化水素系の第4類危険物に比べて炭素の含有割合が低く、燃焼時にすすとなる未燃焼の炭素が生じにくいため、黒煙をほとんど出さずに燃焼します。さらに炎の色も薄く、明るい場所では目に見えにくいという特徴があります。
理科の実験で使うアルコールランプを思い浮かべるとイメージしやすいでしょう。エチルアルコール(またはメチルアルコール)を燃料とするアルコールランプの炎は、ろうそくのような黒っぽい炎ではなく、青みがかった薄い色でほとんど煙が出ません。これはアルコール類が炭素の少ない分子構造を持ち、完全燃焼しやすいためです。
この「燃えていることに気づきにくい」という性質はアルコール火災の危険性としてよく強調される点で、「黒煙をあげて燃える」というのはガソリンなど他の第4類危険物(石油類)の特徴であり、アルコール類の説明としては誤りです。
代表的なアルコールの性状
品名としての「アルコール類」は炭素数1〜3の飽和一価アルコールを指します。代表的なものをまとめると次のとおりです。
| 物品 | 分子量 | 比重 | 蒸気比重 | 沸点 | 引火点 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| メチルアルコール(メタノール) | 32 | 約0.80 | 約1.1 | 約64℃ | 約11℃ | 毒性が強く、失明や中毒死のおそれがある |
| エチルアルコール(エタノール) | 46 | 約0.80 | 約1.6 | 約78℃ | 約13℃ | 酒類の主成分。毒性は比較的低い |
| イソプロピルアルコール(2-プロパノール) | 60 | 約0.79 | 約2.1 | 約82℃ | 約12℃ | 消毒用アルコールとして使われる |
| n-プロピルアルコール(1-プロパノール) | 60 | 約0.80 | 約2.1 | 約97℃ | 約23℃ | 引火点が20℃を超える例外的なアルコール |
比重はいずれも約0.79〜0.80で、水より軽いという点は4物品に共通しています。第4類危険物には比重1を超える例外(二硫化炭素や酢酸など)もありますが、アルコール類にはそうした例外はありません。
表のとおり、分子量が大きくなるほど蒸気比重も大きくなる傾向があります。蒸気比重はおおむね分子量に比例するため、メチルアルコール(32)→エチルアルコール(46)→プロピルアルコール(60)の順に蒸気比重も大きくなります。
他の選択肢が正しい理由
- (2) アルコール類は揮発性が高く蒸気を発生しやすい一方、上の表のn-プロピルアルコール(引火点約23℃)のように、引火点が20℃を超えるものも含まれます。
- (3) メチルアルコール(メタノール)は体内で有毒なギ酸・ホルムアルデヒドに代謝され、失明や中毒死を引き起こす強い毒性を持つことで知られています。
- (4) 蒸気比重は分子量にほぼ比例するため、分子量が大きくなるに従って蒸気比重も大きくなります。
- (5) ビールや日本酒、ウイスキーなど酒類に共通して含まれるアルコール成分はエチルアルコール(エタノール)です。
まとめ
アルコール類は「燃焼時に黒煙をほとんど出さず、炎も見えにくい」という点が、ガソリンなど他の第4類危険物と対比される重要な特徴です。この性質を知らないと、逆に「よく燃えるから黒煙も多いはず」と誤って判断しやすいため、注意が必要です。あわせて、分子量と蒸気比重の関係、引火点が20℃を超える例外(n-プロピルアルコール)も押さえておきましょう。